週刊木曜日 『店主のちょっと聞いてね』

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 6月15日号 「素晴らしき語り部達」 前編

店 主…パソコンの再々の故障で、2週間『週刊木曜日』をお休みしてしまいました。
 頭もリフレッシュして今週から再開いたします。


悪魔君…一足早い夏休みだったぜ。
 それにしてもワールドカップサッカー、日本代表もう少し頑張ってほしいね。
 初戦のオーストラリアとの戦いぶりは、あれが日本かと疑ったね。
 相手のパワープレイに押されっぱなしの90分間。
 相撲の世界と同様、サッカーも格闘技であることを再認識したぜ。

店 主…私も同感で、体力と高さで劣る日本人はもう少し戦術を考えるべきだったと思いますね。
 さて、4月20日から始まった『過去から何を学ぶか』というテーマから一歩掘り下げて
『素晴らしき語り部達』というテーマで進行していきます。

悪魔君…チェルノブイリの生き証人のユーリー・シチェルバク氏とボロジーミル・ティーヒ氏
 まさに語り部達だね。

店 主…
そうです。
 二人の講演によって、原発事故の悲惨な状況を我々は十分理解でき、
 地震国日本で脱原発を進める方向に市民レベルで考える良い機会となりました。

悪魔君…店主君、ところでアイヌのユーカラを知っているかね?
 

店 主…ユーカラと言えば、文字をもたないアイヌの人達の口承文学のことですね。
  つまり、彼ら自身が語り部そのものなんですね。

悪魔君…そうなんだ。
 君も知っているかと思うが、アイヌの長老で元国会議員の萱野茂氏が最近亡くなったんだ。
 俺が定期購読している雑誌「人間家族」5月号に
萱野氏を悼むという文が掲載されたんだ。
 それを紹介するぜ。少々長いが我慢して読んでくれ。

 
アイヌ民族の長老 萱野茂さんを悼む
                         
辻 信一 (ナマケモノ倶楽部) 明治学院大学教授
 辻信一とご縁でつながっている皆さん。

 アイヌの指導者であり、シサムとしてのぼくたち日本人の指導者でもあった萱野茂さんが
 亡くなりました。ぼくの思いを以下、書き留めてみました。
 皆さんとともに、彼の遺志を継いで脱原発のために働けたら幸いです。
    中略
 ぼくが萱野さんのことをそんなに気になっていたのは、最近加速するばかりの原発をめぐる
 動きのせいだ。
 特に六ヶ所村の再処理工場でのアクティブ試験なるものの、あまりに性急な(なりふり構わぬ)開始。
 あれはまさに縄文の地、アイヌの大地への歴史上最大級のテロだ。
 もうひとつのグラウンド・ゼロではないのか。
 これをやる側が、アイヌの人々に思いを馳せることがなかったのだろうということは想像できる。

 でも、それを止めたいと願う我々はどうなんだろう、とぼくは思わずにいられない。
 ぼくはとにもかくにもまず萱野さんのところに行って知恵を借りてきたい、と思った。
 でも、萱野さんが逝ってしまった今となっては、本の中に、テープの中に、そしてぼくたちの記憶の中に
 残された彼の言葉に、もう一度耳を傾けるしかない。
    中略
 最近の萱野さんとのご縁は、ピーター(函館の友人)が外国向けに英訳した『アイヌとキツネ』への
 推薦文を、デビット・スズキからもらうお手伝いをさせてもらったことだった。
 
 
ほかの動物たちのことを十分尊重しないアイヌに対し、キツネがチェランケ、つまり異議申し立てをして
 アイヌの人々が反省し謝罪する、というアイヌの民謡に基づく萱野さんの物語だ。


 萱野さんと最後にお目にかかったのは今からちょうど5年枚の2001年のこと。
 ぼくの大学で行われた「チェルノブイリ15周年」(主催:ナマケモノ倶楽部、大地を守る会)の集会に
 無理を言って来ていただいた時だった。
 そこで、萱野さんはチェルノブイリ事故の後、北欧先住民であるサーミの地を訪れた時のことを話した。
 
 大地の上にあるすべてのものを同胞とみなす先住民族は、
 「台地を離れては暮らしていけない」ものであること、
 だからこそ、大地が汚染され、生態系が破壊されたときに、
 もっとも大きな犠牲を強いられてきたのだということを、ぼくたちに思い出せてくれたのだった。
 
 彼はこう言った。
 
「原発は天に向かって唾を吐くようなことだ。吐いた唾は必ず、自分の顔に落ちてくる」
 今日、私はこれを遺言のつもりで言うんですと、彼は会議の前に僕に漏らしたものだ。
 
 また講演の中で、彼はこんなことも言っていた。
 
「いくら悲惨な事故が起こっても、懲りずに原発をつくり続けている人たちを見ていると、
  神様は、あまりにもおごり高ぶって、ほかの生き物達のことを何一つ考えなくなった人間を滅ぼす
  ためにこそ、ウランのような恐ろしいものをこの世に降ろされたのではないか、と思わずにいられない。
  そんな
私の不安があたっていなければいいのだが」と。
      中略
 チェルノブイリの原発事故からちょうど20年、水俣病公式確認から50年。
 原子力産業を推進しながら核拡散を防止するのだというIAEA(編注:国際原子力機構)が
 チェルノブイリの被害を過小評価し「チェルノブイリは終わった」という幻想を作り出すのに躍起になって
 いるのは、日本の政府や産業界が「水俣」を過去のものとして封印しようとしてきたことと、
 ピッタリ重なる。
 
 それはまた、日本人がアイヌを差別と迫害で社会の片隅に追い込み、過去のものとして博物館の中に
 閉じ込めようとしてきたこととも重なる。

 そういえば、不知火の漁師で水俣病患者でもある緒方正人さんは、
 4月29日の「新たな50年のために」と題する水俣病講演会で、こんなことを言っていた。

 仮に、人間の世界では、薄っぺらな謝罪の言葉や補償金や「和解」とかで、問題が解決したかのような
 幻想を作ることができたとしても、人間とともに死んでいった魚や鳥たちはどうするのか。
 かれらに、札束をちらつかせるわけにもいかないだろう、と。

 これをぼくは、海の先住民族から届いた貴重なメッセージとして受け取りたい。
 沙流川の先住民である萱野さんも繰り返しぼくたちにこう語っていた。

 かってアイヌは、主食であるサケを、キツネやカラスたちと分かち合うことを忘れなった、と。

 ぼくは、萱野さんの霊前に誓おうと思う。
 あなたがぼくたちに遺言としてくださった言葉を、もう一度かみしめることから始めます。
 そいて、あなたの死の1ヶ月あまりに吐き出され始めた、六ヶ所村再処理工場からの放射能を
 止めるために、最善を尽くします。

 そして、近づく東海巨大地震の予想震源の真上にある浜岡原発を止めるために、
 できるだけのことをします。

 あなたの不安が、現実とならないように…。
 ご心配なく、とは残念ながら言えません。
 しかし、あとはお任せください。
 あなたの深い知恵をいただいたぼくたちには、きっとこの大切な仕事をするための大きな力が宿って
 いるはずですから…。
                             5月7日 辻 信一

 

店 主…「原発は天に向かって唾を吐くようなことだ。吐いた唾は必ず、自分の顔に落ちてくる」という
 萱野さんの言葉がずしーんときました。
 この追悼文を書いた辻さんは「スローイズビューティフル」の著者でもあり、
 この週刊木曜日でも彼の文を引用させていただいています。
 彼のナマケモノ倶楽部の編集でできた本が『あなたが世界を変える日』、
 そう私の大好きな女性、カリス・セヴァン・スズキさんの名スピーチを日本に紹介した張本人が
 辻さんなんです。

 

悪魔君…今、萱野さんから辻さんに「語り部」というタスキが渡されたんだ。

店 主…また、漁師で水俣病患者の緒方さんも地球市民にとって大切な語り部でもあります。
 彼らの勇気と行動力と頑張りを我々も受け継ごうではありませんか。
 そのためにも、声を出し続けていきますので今後ともよろしくお願いします。



編集後記:私の大好きな人で、掛川での「チェルノブイリ事故から20年」の講演の仕掛け人の藤田さんから以下のメールが
 きました。これまた長いですが読んでください。

加藤さんは、祝島の名前をご存知ですか。
山口県に建設されようとしている上関原発予定地の対岸にある島で、20年以
上にわたりずっと反対運動を続けてきたところです。
私はここのひじきを買っています(すぐ水で戻りとてもおいしい)。

その祝島が今大変なことになっていると、おととい下記の回覧メールが来ま
した。中国電力がボーリング調査を強行し、反対する住民と衝突があり、け
が人も出たようです。住民の多くは高齢者。

最新情報では、火曜日まで工事を中断することを中国電力が受け入れたよう
です。けが人が出たことと、抗議のFAXが多数来たのが効いているようで
す。

浜岡原発がそうであるように、原発はいったんでき
てしまえばなくすのは容易ではありません。原発がらみのお金が下り、仕事
もたくさん出るので、原発依存症(?)の体質ができあがってしまうので
す。

それだけに、原発のお金をもらわず、原発に頼らずに生活し、その生活を守
るためにからだをはっている人たちの姿を見ると、本当に何もできないけれ
ど何かしなければという思いでいっぱいです。

土、日と休みが続いたので、明日は山口県庁、上関町役場、中国電力に全国
から抗議のFAXを送りつけてやりたいです!(特に県がたちが悪い。町役場
は助役が現場に来て仲介に入ったが、県は「安全第一に作業するよう事業者
に要請してある」と冷たい対応)
抗議の声をよろしくお願いします。

上関原発反対運動 速報版
http://shimabito.net/

元・祝島漁協ホームページ(仮)
http://www5d.biglobe.ne.jp/~jf-iwai/


以下は山口ネットワークから送られた緊急FAXです。今現在も(6月8日午
後4時)風雨の中、渾身の阻止行動がなされています。
皆さんの力を貸してください。(大分県  NS)


 みなさまへ

 山のような巨大クレーン台船が、田の浦浜に座り込んで抗議を続ける祝
島の人たちにおそいかかろうとしています。
 
 今日(6月7日)は山戸貞夫さんが警備員の暴行によって、「外傷性頚椎
症」で全治10日間の負傷をされました。
 中国電力は上関原発詳細調査の資材搬入のため、予定地田の浦の浜に仮桟
橋を作ろうとしています。
 しかし、2006年3月23日、岩国地裁の判決で、祝島漁民の個人操業権が
はっきりと認められたばかりです。祝島の人たちの唯一無二のこの大切な漁
場に、
このような構築物を造ることは重大な漁業操業妨害です。
 中電は同じ判決で原発建設は認められたと強弁し、作業を強行しようとし
ていますが、補償金を受け取っていない祝島の人たちの漁業権を、このよう
に力づくで奪うことは絶対に許せません。

 中電のこの暴挙をやめさせるよう皆さんからの抗議のFAXを送ってくだ
さい。こころからのお願いです。急いで送ってください。またこのFAXを
友人、知人、関心のあるすべての人に送ってください。

>>
>>  ●山口県二井関成知事へ  FAX 083−933−2129

「中国電力の仮桟橋設置工事は祝島の許可・自由漁業権の侵害です。ただ
ちにやめてください」

 ●中国電力白倉茂生社長へ  FAX 082−523−6185
「祝島漁民の権利を侵害する行為をただちにやめてください」

 ●上関町柏原重海町長へ FAX 0820−62−1600
「作業強行によりけが人を出した中国電力への田の浦海岸の占用許可を取
り消してください」
       
原発いらん!山口ネットワーク
            代表 武重登美子
    〒742−0032 山口県柳井市瀬戸側268−23
             TEL&FAX 0820-22-0071

 上関原発反対運動 簡易版→
http://shimabito.net/
よりリアルタイムの情報が得られます。